釣った魚にまずい魚って、言われた日のこと

エッセイ

「ボラは、まずい。」

「ボラはクソまずい。」

ふと、父が言ったあの言葉を

思い出すことがあります。


小学五年生の頃、修学旅行で

海釣りを体験しました。

小型のボートに4人くらいで乗り、

釣りをしました。

とにかく、たくさん釣れた。

10匹くらい持ち帰りました。

その晩、母が

煮魚、焼き魚にしてくれました。

そして、

机に、並べられました。

家族みんなで、

食卓を囲んでつついた。

すると、突然。

「ボラはクソまずい。」

父がそう言った。

父は海の近くで育ったから、

魚にはうるさかった。

僕は山奥で育ち、

川魚ばかり食べていたから。

海の魚の味については

よくわからなかった。

というか、そもそも魚の

うまい・まずいを

気にしたこともなかった。

あのときの感情は、

なんだったんだろう。

今もこうして、

ふと思い出すことがあるのは

“なぜなんだろう。”

ずっと、心に焼きついている。

魚だけに。。(あ、ごめん)

せっかく釣ってきた魚に

文句を言われたから?

父親の“俺、海の魚詳しいっす”アピールが

ウザかったから?

違う。

たぶん、

そうじゃない。

もっと

スケールのでかい話だと思う。

父は、悪意があって

言ったようには見えなかった。

むしろ。

「もっと美味しい魚あるんだよ」

っていう、

ちょっとした

親切心のようにも見えた。

でも、それでも。

子供ながらに、思った。

「人間って、勝手だよな」って。

勝手に釣り上げて、

勝手に料理して、

勝手に他の魚と比べて、

「お前は、まずいよ」って。

たまったもんじゃない。


昔見たドラマのワンシーン

を思い出す。

貧乏な母子家庭。

母親が漁師さんから

市場に出せないボラを

無料でもらってくる。

それを煮て、焼いて、

子供と食べる。

「おいしいね」

「ボラって美味しい魚なんだよ」

…。

じゃねえんだよ!!!

勝手に値踏みしてんじゃねえよ。

“安くてまずいボラ

食っても幸せな家庭

って、勝手な演出すんなよ。

なんでボラ使って

感動シーン演出してんだよ!?

「ブリモドキ」ってなんだ!?

ブリに似てるからモドキ?

そんなの人間が勝手に決めただけじゃねえか。

僕がその魚だとして、

一生懸命生きてきた尊い我が命を、

「モドキ」って呼ばれてたまるか。

別に、ビーガンじゃない。

ビーガン否定派でもない。

普通に、

食べ物の好き嫌いもある。

「まずっ」って思うものだって、

そりゃある。

でも、せめて。

せめて、

出されたもんはありがたく

“美味しく頂いてやろう。”

それくらいの敬意は

持っていようかなって

そう、思いました。


また、

見てくれたら嬉しいです。

そうすればすでに、

あなたは

読者モドキではないかも。

すでにあなたは、、

マグロですね。

では、またっ。

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